春の林下を彩る代表的な野草、カタクリ。
すんなり伸びた花茎の先に淡い紅紫色の花を下向きにつけ、楚々とした美しさがあります。
カタクリは、ユリ科の多年草で「初百合(はつゆり)」や「百合芋」などの別名も。
またカタクリは、種子から育って花が咲くまで、なんと8年近くかかるといいます。
花は温度によって開閉することでも知られており、17~20℃以上で花被片が開き、
25℃では完全にそり返り、春の気温上昇につれて表情を変えるのが特徴です。
花期は10日ほどと極めて短く、花が終わり、葉が枯れた後は、
芽が出る翌年3月頃まで球根のまま長い休眠生活に入ります。
このように、春先に開花し夏まで葉をつけると、その後は地中で過ごす植物のことを
「スプリング・エフェメラル」といいます。
“春のはかない命”という意味ですが、その可憐さから「春の妖精」とも呼ばれます。
かつてはカタクリの地下茎から良質のでん粉が取れ、昔は片栗粉に用いられましたが、
精製に手間がかかるため、今ではジャガイモやサツマイモのでん粉から作られています。
もはや片栗粉とは名のみで、現在はほとんど使われることはありません。