七十二候 ・ 第七十二候 「 鶏始乳 ( にわとりはじめてとやにつく ) 」

七十二候が大寒の末候に変わり、春の気配を感じた鶏が卵を産み始める頃となりました。

「乳す」は鳥が卵を産むという意味です。

養鶏が中心となった現代では分かりづらい状況となってしまいましたが、

本来、鶏の産卵期は春から初夏にかけてで、卵はその時期にしか生まれない貴重品でした。

今は季節を問わず店頭に並ぶため、旬の感覚は希薄ですが、卵の旬は2~4月。

春の卵は、母体の中でゆっくり時間をかけて成熟していくため栄養価が高くなるといわれています。

ただしこれは有精卵の場合のみで、無精卵は1年中、味わいや質に変化はありません。

ニワトリ

かつては時を告げる鳥として神聖視されてきた鶏。

時計のない時代、雄鶏特有の甲高い鳴き声は、朝の訪れを知る手だてとされてきました。

「一番鳥=明け方に最も早く鳴く鶏」は丑の刻(午前2時)、

「二番鳥=夜明けに一番鳥の次に鳴く鶏」は虎の刻(午前4時)に鳴くとされ、

農家のお嫁さんはその声を聞いて起き出し、竃を炊きつけ朝の準備をしたそうです。

ニワトリ1

鶏は夜明けを知らせるため、古来より、神や精霊の時間である夜と、

人間の活動する昼との境目を告げる霊鳥だと考えられてきました。

そんなことからも、鶏は長い冬の終わりを告げるのにふさわしい動物と言えそうです。

ところで今回の候は七十二候の最後で、2月4日の立春からは

「東風氷を解かす」という第一候に変わります。

ようやく春がやってきますね。

 

季節のいきもの 「鴛鴦 (おしどり)」

水鳥の中でも最も色彩豊かで美しいオシドリ。

この多彩で鮮やかな羽毛を持つのはオスのオシドリで、背には思羽(おもいば)と呼ばれる
イチョウの葉形をした羽があります。

一方、メスはというと全体的に暗褐色で地味な色合いをしています。

鴛鴦(オシドリ)のつがい

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七十二候 ・ 第七十一候 「 水沢腹堅 ( さわみずこおりつめる ) 」

七十二候が大寒の次候に変わり、厳しい寒さで沢の水さえも凍る頃となりました。

大気の冷えがまさに底となるこの時期、池や沼の水面の氷は、

溶けたり凍ったりを繰り返しながら厚みを増していきます。

白川氷柱群

その年の最低気温が観測されるのも、この頃が一番多く、氷点下に達する地域も多くみられます。

ちなみに寒さの日本記録は-41度で、明治35年1月25日に旭川市で観測されました。

反対に、暑さの日本記録は高知県四万十市の41度です。

白川氷柱群1

写真は木曽の「白川氷柱群」。

最低気温が-10℃~-20℃にもなる真冬、岩肌に染み出た御嶽からの湧水が

厳しい寒さで凍りつき、美しい氷のカーテンを見ることができます。

その大きさはなんと最大で幅250m、高さが50m。

厳寒の冬の時期にのみ姿を見せる氷柱群は壮観です。

夜にはライトアップもされ、昼間とは一味違った姿を見ることができます。

旬の味覚 「 鰻 ( うなぎ ) 」

今日は寒の土用の丑の日です。

一般に「土用丑の日」といえば夏の土用が有名ですが、1年には土用と呼ばれる期間が4回あり、

立春・立夏・立秋・立冬のそれぞれの前18日間を「土用」といいます。

うな重

また、夏の土用丑の日に鰻を食べるという風習がありますが、これは江戸時代から。

平賀源内が「丑の日に『う』のつくものを食べると夏バテしない」という伝承からヒントを得て、

夏に売れないという鰻屋に知恵をつけたのが始まりといわれています。

鰻は高タンパクで消化が良く、ビタミンなどの栄養も豊富です。

そのため夏バテの回復に大いに役立つ一方、本来鰻は、

冬眠を間近にして脂がのる晩秋から初冬にかけてが最もおいしい旬の時期です。

 

そんなことから鰻が有名な長野県の岡谷市は、「寒の土用丑の日」が全国に広まるよう、

様々なイベントを行っています。

わが家では、長野県に引っ越してから、夏と冬の土用丑の日(付近)の年に2度、

うなぎを食べに行くようになりました。

今日は、うなぎの町・岡谷にある水門さんでうな重をいただきました。

諏訪湖のほとりにある鰻屋さんで、甘めのタレと鰻のふっくら感や香ばしさが好みです。

季節の草花 「 青木 ( あおき ) 」

アオキは日本原産の常緑性低木で、古くから庭木に植えられている馴染み深い植物です。

葉だけでなく、枝も一年中、緑色をしているので「アオキ」という名がつきました。

別名は「青木葉(アオキバ)」。

アオキの学名「アウクバ・ヤポニカ」は、このアオキバが語源となっています。

日陰でも育ち、寒さにも強いことから北側に植える庭木としても人気があります。

アオキ

アオキは、なんといっても冬に実るつややかな赤い実が美しく、

緑の葉とのコントラストも目を楽しませてくれます。

ですが、アオキは雌雄異株の植物で、実をつけるのは雌株(めかぶ)だけです。

近くに雄株(おかぶ)がなければ結実しません。

アオキ1

アオキがはじめてヨーロッパに紹介されたのは江戸時代、

ジョン・グレファーというイギリス人が、アオキの美しさに魅せられ、

本国へ持ち帰ったことによります。

しかし持ち帰ったアオキが雌株のみであったために結実せず、

改めて王室の園芸関係者が渡来して、アオキの雄株を持ち帰ったという話が残っています。

アオキ2

またアオキは、火傷や腫れ物、凍傷などに有効であるとされ、民間薬として利用されてきました。

葉の汁を煎じ煮詰めたり、葉をそのままあぶって黒くなったものを患部に貼って使ったようです。

胃腸薬の「陀羅尼助(だらにすけ)」は、黄檗(おうばく=キハダの生薬名)で作られますが、

アオキを入れて煮詰めると真っ黒になり、しかも大変つやのあるものになるそうです。

押し葉にするときにも黒変しますが、これはアウクビンという成分によるものです。

 

季節の草花 「 柾 / 正木( まさき ) 」

常緑で青々と茂る葉をもつマサキ。

初夏に白緑色の小さな花を咲かせますが、あまり目立ちません。

マサキは花よりも、主に葉や樹形を楽しむ庭木で、生け垣によく用いられます。

園芸品種も豊富で、緑色の葉をしたマサキの他、黄色の斑が入るキンマサキ、

白い斑の入るギンマサキ、新緑が黄色いオウゴンマサキなどがあります。

マサキ

秋から冬にかけて、果実が熟すと3~4つに裂け、中からオレンジ色の種子が現れます。

葉だけでなく、この実も美しく、単調になりがちな常緑に変化をつけてくれます。

名前の由来は「真青木(まさあおき)」から。

それがつまってマサキになったそうです。

マサキ1

写真は近所で見つけたマサキの実。

何度も前を通ったことがあったのに、オレンジ色の実がなって、ようやくその存在に気付きました。

葉っぱだけだと何の植物なのか分からないことがよくありますが、

花が咲いたり実がなって、それが何だか分かるとより散策が楽しくなります。

七十二候 ・ 第七十候 「 款冬華 ( ふきのはなさく ) 」

七十二候が大寒の初候に変わり、ふきのとうが出始める頃となりました。

厳しい寒さの中、そっと黄色いつぼみを出すふきのとう。

雪解けを待たずに顔を出す春の使者で、凍てつく地の下では、春の支度が着々と進んでいます。

款冬とはフキのことで、その花茎をフキノトウといいます。

冬に黄色の花を咲かせるところから、冬黄(ふゆき)がつまってふきになったと言われます。

ふきのとう

ふきのとうは、春一番に最も早く食べることができる山菜で、

野山や道端など、日当たりのよい場所に自生します。

現在は食用として栽培もされていますが、

栽培ものは大きくて細長く、香りが少ないのが特徴です。

 

「春の皿には苦みを盛れ」とは先人の言葉。

独自の香りとほろ苦さがあり、カロテン、ビタミンB1、カリウムを含むふきのとうは、

冬の間におとろえた体を目覚めさせてくれます。

冬ごもりから出てきた熊が、まず最初に口にするのも、このふきのとうと言われています。

ふきのとうは、咳止め、咳痰、健胃、浄血、毒消しなどの薬効があることでも知られています。

二十四節気 「 大寒 ( だいかん ) 」

二十四節気が小寒から大寒に変わり、一年で最も寒さが厳しくなる頃となりました。

大寒は冬の季節の最後の節気です。

春は目前ながら、ますます寒さ厳しいこの頃は、寒稽古や寒垢離(かんごり)、

寒念仏(かんねぶつ)などの寒行が行われます。

大寒

一方で、昔から日本ではこの寒気を利用して様々な食べ物を仕込んできました。

寒風にさらして作る、凍み豆腐や寒天などの乾物。そして酒や醤油や味噌の発酵食品。

特に、この寒の時期に汲んだ水は「寒の水」と呼ばれ、

寒さと乾燥のため雑菌が少なく腐りにくいとされることから、

清らかな水が必要な酒や味噌を仕込むのに用いられてきました。

 

大寒の最後の日が節分で、翌日2月4日は立春です。

これからは、日が次第に長くなり、少しずつ暖かくなっていきます。

「三寒四温」という言葉のように、厳しい寒さが3日続くと、その後の4日は暖かくなり、

寒い中にも少しだけ春の気配を感じられます。

季節のいきもの 「 鴲 ( しめ ) 」

太く短いくちばしを持ち、ずんぐりとした体つきのシメ。

目とくちばしの周囲およびのどは黒色で、全体に茶褐色と地味な色合いですが、

風切羽の先端はきれいな青黒色をしています。

シメ

シメは北海道や本州の中部以北で繁殖し、秋冬には冬鳥として本州以南に渡ってきます。

山のふもとの雑木林に生息し、冬は市街地の公園や人家の庭でも見ることができる鳥です。

シメは、ムクノキやエノキ、カエデなどの種子を主食とし、

その太いくちばしで硬い木の実を割って食べるのですが、

挟む力はなんと人の握力と同じくらいで、30キロにもなるそうです。

シメアップ

シメの特徴といえば、やはり木の実を割るのに適した太いくちばしですが、

季節によってその色が変化することでも知られています。

冬は写真のように淡いピンク色で、春先から夏にかけての繁殖期になると、

雌雄ともにくちばしの外皮が剥がれて鉛色に変わります。

七十二候 ・ 第六十九候 「 雉始雊 ( きじはじめてなく ) 」

七十二候が小寒の末候に変わり、雉のオスがメスを求めて鳴き始める頃となりました。

雉のメスは全体的に茶褐色をしていますが、オスは目の周りに赤い肉腫があり、

深緑色を主色とした長く複雑美麗な羽をもっています。

早春の発情期になると、オスは「ケーンケーン」と甲高く鋭い声で鳴いて縄張り宣言をします。

雉

また雉は、地震を予知して鳴くと言われ、古くからその挙動が注目されてきました。

これは、足の裏で震動を敏感に察知できるからだそうで、

地雷・雷などの時に雉が鳴くことを「音合わせ」といいます。

雉アップ

雉は日本の国鳥で、古名をキギスまたはキギシといい、

それが転じてキジになったそうです。

宮廷や貴族の間では美味なるものとして好まれ、

雉子の切身を焼いて熱燗の清酒をかけた「御雉子(おきじ)=雉子酒」は

天皇が正月の祝いに用いたとされています。