季節の言葉 「 露時雨 ( つゆしぐれ ) 」

近頃、穏やかな秋晴れの日が続いていますね。

風のない晴れた日の夜に降りる露は、そんな日の早朝に見られます。

秋が深まり、まるで時雨が降ったかのように露がいっぱいに宿ることを

「露時雨(つゆしぐれ)」といい、秋の季語にもなっています。

露時雨

朝は清々しくきれいな時間です。

野原一面の露時雨は陽の光を受け美しく輝き、

その姿に魅せられ草に分け入ろうものなら、

露は雨が降りかかるかのようにこぼれてきます。

 

朝露

太陽が昇ってくるとすぐに消えてしまう朝露は

儚いものに例えられ、「露の命」「露の間」「露の世」など

和歌や詩、俳句にも好んで用いられてきました。

七十二候 ・ 第五十三候 「 霎時施 ( こさめときどきふる ) 」

暦が霜降の次候に変わり、小雨が思いがけず降っては止む季節となりました。

この小雨とは、秋雨のようにしとしと降り続く雨ではなく、

ぱらぱらと通り雨のように降り、じきに止んでしまうような

「時雨(しぐれ)」のことです。

 

晴れていたかと思うとサァーッと降り、

傘をさす間もなく青空が戻ってくるような通り雨。

不意に訪れるものや、しきりに続くものを時雨に例え、

「木の葉時雨」「蝉時雨」「空の時雨(涙の意)」など、

美しい言葉も生まれています。

 

ちなみに時雨は、北西の季節風が山地につき当たり上昇するときに、

冷えて雲を生じることによって、雨を降らせます。

そのため京都や長野、岐阜や福島のような山に囲まれた地形の所に多いそうです。

 

時雨

先週末の奈良井宿。

時雨心地の空のあと、やっぱり小雨が降ってきました。

かと思えば30分後には薄ら虹。

 

薄ら虹0

その年に初めて降る時雨を「初時雨(はつしぐれ)」といい、

人々や動物たちが冬支度をはじめる合図だといわれています。

こうしてひと雨ごとに気温が下がり、だんだんと冬が近付いてくるんですね。

 

季節の草花 「 杜鵑草 ( ホトトギス ) 」

杜鵑草

こちらの花をご存知でしょうか?

「杜鵑草」と書いて「ホトトギス」と読むこの花は、白地に紫色の斑点模様が、

鳥のホトトギスの胸の斑に似ていることから名づけられました。

開花は9月から11月頃、北海道以南に分布し、日陰のやや湿った場所を好みます。

ホトトギス

先月末に木曽の馬篭宿でステキな杜鵑草の盆栽を見つけました。

面白いくらいに毎朝きちんと一つずつ花開いて愉しませてくれた杜鵑草。

独自の色形が魅力なことから、茶花や生け花にも多く利用されています。

そして買ったときには気付かなかったのですが、鉢の形が上から見ると瓢型。

山野草

無造作に折りたたんだような、作りこみ過ぎていないところがまたステキです。

山野草が好きで、夏ごろから少しずつ庭に盆栽が増えていきましたが、

受皿がついているのはこれが初めて。

やっぱり家の中で植物が楽しめるのっていいなと思いました。

そしてついでに部屋用の小さな霧吹きも購入しましたが、やっぱり苔には霧吹き必須ですね。

しっとりとした苔の表情に癒されます。

ホトトギス白鳥花

ちなみに奥の白い花は「白鳥花・白丁花(ハクチョウゲ)」。

白鳥は当て字のようですが、ホトトギスとハクチョウの寄せ植えとは、

センスの良さに脱帽です。

 

旬の味覚 「 柿 ( かき ) 」

10月26日の今日は「柿の日」です。

「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」

明治28年のこの日、俳人・正岡子規がこの句を詠んだことから、

全国果樹研究連合会により柿の日に制定されました。

柿1

秋の深まりとともに色づく柿は、まさに今が旬の果物。

美味しいだけでなく、「柿が赤くなると、医者が青くなる」

と言われるほど栄養価が高いことで知られています。

特にビタミンやカロテンが豊富で、風邪の予防や二日酔い防止に効果的です。

ただし食べ過ぎると、お腹を冷やし消化を悪くすることがあるようです。

 

ところで柿には様々な種類がありますが、おいしい柿には共通点があります。

それは“ヘタが柿の実とぴったりくっついている”こと。

隙間がある柿は、そこから虫が入り実が柔らかくなってしまいます。

また柿は、成長過程でヘタが一枚でも欠けてしまうと、

実が育たずに十分な大きさにならないとも言われています。

ちなみに果肉の黒い粒々は渋のようですが、実はこれが甘みのサイン。

 

みかんとかき

柿とみかんの茶入れと小皿です。

自然をモチーフとしたものに心ひかれます。

それぞれ買った時期も場所もばらばらですが、何年経っても好きなものって変わりません。

みかんの塩壺

こちらは栃木県のトネダ民藝さんの作品です。

もともとは茶入れとして売られていましたが、我が家では塩壺として使っています。

みかん独自の肌合いが見事に表現されています。

柿の茶入れ

こちらは新潟県のイソダ器物さんの茶入れ。

内蓋のつまみがヘタ、セットの茶さじは葉っぱモチーフと完全に一目ぼれでした。

何年も前に購入したもので、とても思い入れのある茶入れです。

旬の味覚 「小豆 (あずき)」

秋の味覚といえば、秋刀魚(さんま)や茸、栗や柿などいろいろありますが、
実は小豆も今が旬の食材です。

小豆は東アジアが原産で、縄文遺跡から発掘されているほど
古くから日本人に親しまれてきました。

『古事記』にも登場していることなどから、すでに8世紀には栽培されていたようです。

小豆

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七十二候 ・ 第五十二候 「 霜始降 ( しもはじめてふる ) 」

今日から暦が霜降の初候に変わり、北国からだんだんと初霜が降り始める頃となりました。

晩秋のこの頃、朝晩の冷え込みがぐっと増し、早朝には草木や地面に

うっすらと氷の結晶が付いていることに気付きます。

霜が降りるようなると、地面近くは氷点下まで下がっています。

もう冬はすぐそこまで来ています。

 

しんと冷えた朝、あたりが霜で真っ白になっているのを見た昔の人は、

霜は雨や雪のように空から降ってくるものだと思ったそうです。

そのため降ると表現しますが、霜は、夜から朝にかけて急激に気温が下がるとき、

空気中の水蒸気が冷えて氷の結晶になったもの。

実際は空から降りてくるのではないのです。

朝露クローバー

今日は「露が降りると晴れ」という諺どおり、朝から秋晴れの気持ちいい一日でした。

露や霜が降りやすいのは、こんなふうに高気圧におおわれ、穏やかに晴れるとき。

風が弱く、雲がない日は放射冷却現象が強まって朝晩ぐっと冷え込むためです。

もうしばらくすると、この朝露も朝霜へと変わります。

(詳しくは9/10日の「 草露白 ( くさのつゆしろし ) 」をご覧ください)

 

二十四節気 「 霜降 ( そうこう ) 」

明日から二十四節気が寒露から霜降へ変わります。

霜降は、朝露がついに霜に変わる、そんな時季です。

秋もいよいよ終わりが近づき、朝晩の冷え込みが厳しくるこの頃、

北国や山里では霜が降りはじめますが、平野では12月の初旬頃になります。

草木は枯れ、秋を惜しむかのように山は紅葉で彩られます。

 

近頃だんだんと日が短くなり、冬の兆しが感じられるようになりましたね。

「霜降」で秋も最後です。

11月の7日からはとうとう「立冬」を迎えます。

コートや暖房器具の準備など、そろそろ本格的に冬支度を始めるのがよさそうです。

唐松岳

去年のちょうど今頃、唐松岳に登りました。

紅葉を楽しみ登りましたが、翌朝テントを開けると一面の雪。

その日はなんと初冠雪でした。

標高の高い山では一足早く冬を迎えています。

霧氷

こちらは樹木の表面に水蒸気が凍結してできる氷「霧氷(むひょう)」です。

蔵王の樹氷が有名ですが、一度は行ってみたいところです。

 

七十二候 ・ 第五十一候 「 蟋蟀在戸 ( きりぎりすとにあり ) 」

寒露も末候に変わり、戸口で秋の虫が鳴き始める頃となりました。

「キリギリス」とありますが、昔は「蟋蟀(コオロギ)」のことをキリギリスと呼びました。

日も短くなったこの季節、家に明かりを灯す頃になると一斉に秋の虫達が大合唱を始めます。

 

コオロギは「コロコロ」「リッリィー」、鈴虫は「リーンリーン」、

松虫は「チンチロリン」と鳴き、秋の夜長を賑やかに楽しませてくれます。

これらはすべてコオロギ科に属するせいか、古くはコオロギが秋に鳴く虫の総称だったそう。

ちなみにキリギリスは、「ギーッチョンギーッチョン」と機織りのように聞こえることから、

別名を機織り虫というそうです。

 

ところで、「虫の声や川のせせらぎなどを心地よいと感じるのは日本人だけ」

と言われているのをご存知でしょうか?

これは、西洋人は虫の音を楽器や雑音と同じく右脳で聴くのに対して、

日本人は言語と同じように左脳で聞くためです。

日本語の擬声語や擬音語が発達しているのも、笑い声や泣き声、自然界の音を

言語として捉えているからだそうです。

 

それが普通だと思っていたことも、他国と比べるとそうではない、ということによく驚かされます。

何年か前に読んで、今でも時々読み返したくなる本のひとつに『ことばと思考』があります。

そこには興味深いことがいくつも書かれています。

例えば、位置関係を表す「前」「後」「左」「右」に相応する言葉を持たない言語があるということ。

オーストラリアのある言語では、物の位置を全て「東」「西」「南」「北」で表すそうです。

この言語の話者は「デッド・レコニング」と言われる非常に優れた方向定位能力を

持っているため、車で100キロ離れた場所からも正確に家の方向が分かるそうです。

 

そして世界には六進法の言語があるということ。

ンドム語という言語では、六進法に近い数え方で、1から6まではそれぞれの言葉があり、

7は6と1、8は6と2、という言葉で表現されます。

この調子で11まで数えますが、12になると6×2という言い方になるそうです。

そして18までいくと「トンドル」という一つの単語に戻り、ここからは18と1、18と2となり、

25からは18と6と1、18と6と2と、とても長い言葉になってしまうそう。

日本の十進法でも数が多くなるとハテナが浮かぶのに六進法とは驚きです。

七十二候 ・ 第五十候 「 菊花開 ( きくのはなひらく ) 」

寒露も次候に変わり、菊の花が咲き始める頃となりました。

9月9日の重陽の節句は、別名「菊の節句」とも言われますが、

ひと月遅れで迎える旧暦の「菊の節句」はちょうど菊の花の盛りのころ。

 

この日には、菊の花を浮かべた菊花酒を飲んで、長寿と無病息災を願う風習がありました。

また、重陽の日につんだ菊の花を乾かして袋に詰めた「菊枕」で眠ると、

菊の香りただよう寝心地に、夢に愛しい人が現れる、邪気をはらうという言い伝えがあり、

女性から男性に贈られたそうです。

 

平安時代には、重陽の前日に、菊の花に真綿をかぶせて夜露と香りを移しとる

「菊の被せ綿(きせわた)」という風習もありました。

節会の当日、この綿で身体をぬぐうと長寿が保たれると信じられていました。

なんとも風雅な慣わしですね。

 

今では天皇家の花として、日本の象徴のようにも思われている菊ですが、

実は日本自生の花ではなく、奈良時代に中国から伝わった花。

この時期には各地で、菊の品評会や菊まつりが行われ、

観賞用として様々な品種が知られていますが、もともと菊は薬草として入ってきたそうです。

漢方では菊は目の薬として知られ、目の充血や腫れ、痛み、視力の低下に

効果があるとされています。

ノコンギク

こちらは「野紺菊(ノコンギク)」。

白色の野菊が多い中で、名前のとおり青紫がかった淡い紺色が特徴です。

野菊を代表する植物で、日当たりのいい草原や道ばたでもよく見かけるノコンギク。

みとごに群生している姿は、秋を感じさせてくれる風景です。

菊の花の咲く頃のよい天候や、秋の穏やかな晴天を「菊日和」といいますが、

この日はまさに菊日和。

陰暦9月の「菊月」は菊尽くしの季節です。

月の名前

先日、女神湖へ行ってきました。

朝の散歩を楽しむために、夜中に出発。

夜明けに空を見上げると、清々しい青空にくっきりと真っ白な有明の月が見えました。

有明の月1

この日の月は、満月がちょっぴり欠けた形の「居待月」。

一夜一夜の月に名前を付けるほど、昔から日本人にとって、月は身近で愛でたい存在でした。

まんまるの十五夜は満ち足りた月で「満月」。

その翌晩の十六夜は「十六夜(いざよい)」。

十七夜は「立待月(たちまちづき)」。

十八夜は「居待月(いまちづき)」。

十九夜は「寝待月(ねまちづき)」。

二十夜は「更待月(ふせまちづき)」と、ずーっと“待つ”月が続きます。

 

満月を過ぎると、月の出は毎夜、すこしずつ遅くなっていきます。

「十六夜」はいざよう(ためらう)ように出てくることより「いざよい」といいますが、

鎌倉時代の『十六夜日記』は10月16日に書き始められたことが由来だそうです。

はじめは立って待つことができた月の出も、だんだんと座って待つほど遅く。

そして寝て待つほどに遅くなり、ついに、夜更けに。

「有明の月」は、十六夜以降、夜が明けてもなお空に残って見える月で、秋の季語。

DSC_07120

この日の朝方、山の端に沈んでいく有明の月を見送っていると、

わたをちぎったような雲の一部が七色に染まっていました。

彩雲

帰宅後調べてみると、これは「彩雲」というそうです。

別名は、瑞雲(ずいうん)、慶雲(けいうん)、景雲(けいうん)、紫雲(しうん)、五雲(ごうん)。

古くから吉祥とされ、神護慶雲や慶雲のように年号が改められたこともあるそうです。

撮影しているうちにあっという間に消えていきました。

女神湖

女神湖はお気に入りのスポットのひとつで、ちょうどひと月前にも散策に出かけましたが、

だいぶ秋らしい色に変わり始めていました。