七十二候 ・ 第四十七候 「 蟄虫坏戸 ( すごもりのむしとをとざす ) 」

秋分の次候の「 蟄虫坏戸 ( すごもりのむしとをとざす ) 」は、

啓蟄の初候の「 蟄虫啓戸 ( すごもりのむしとをひらく ) 」と対になる候です。

夏が終わり、寒さの到来を察知した虫たちが地中にもぐりだし、

冬ごもりの支度ををはじめる頃となりました。

 

蝶の幼虫はさなぎになって寒さに備え、クワガタやテントウ虫は成虫のまま

春まで木の根元や土の中に潜ります。

虫たちは秋冬が終わるのを、約半年間も土の中で静かに待ちます。

そして、啓蟄の頃に再び姿を現すのです。

 

ヤマトシジミ

先日、小豆の葉の上に「大和小灰蝶(ヤマトシジミ)」のつがいがいました。

羽を開いた姿がしじみ貝を開いたように見えることから名づけられたヤマトシジミ。

幼虫はカタバミの葉を食べて育つそうです。

 

そういえば、春先に菖蒲のそばにひっそり咲いているカタバミの姿をみかけました。

カタバミは、夜になると葉を閉じて眠りにつきますが、

そのとき、葉の片方が欠けているように見えることが名前の由来です。

雑節 「 秋の社日 ( 秋祭り ) 」

今日は秋の社日です。

社日(しゃにち)は雑節の一つで、生まれた土地の神様、産土神(うぶすながみ)を祀る日です。

この日は産土神社に参拝し、春には五穀の種を供えて豊作を祈願し、

秋にはその年の収獲に感謝します。

 

社日は春と秋にあり、春のものを春社、秋のものを秋社といい、

春分または秋分の日に最も近い戊(つちのえ)の日が社日となります。

「戊」という文字には「土」という意味があります。

農業の視点から見ると、春の社日は種まきの時期、秋の社日は収穫の時期にあたります。

これらは農業において忘れてはいけない大事な時期ですので、

社日は全国的に重要な節目の日とされるようになりました。

 

春の社日に山からやってきた神は、田畑の作物を成長させ、

秋の社日に山へ帰っていくと言われています。

この日、たわわに実って収穫直前となった稲穂を少し抜きとり、

山へと帰る神に真っ先に捧げて感謝します。

また、社日は「金忌」といって鍬などの農具を使ったり土を耕すことを

禁じているところもあるそうです。

これは、神様の頭を掘ってしまうことになるからと言い伝えられています。

 

9月中旬から10月下旬にかけて、全国各地で秋祭りが行われますね。

実は秋祭りは、土地の神様に秋の収穫を感謝し、翌年の農作を祈願するお祭りです。

笛を吹いたり、獅子が舞ったり、神輿を担いだりと、祭りのスタイルは

地域によって異りますが、どれも産土神への感謝の気持ちを表しています。

この秋祭りが終わると田の神様は山に帰り、山の神様となるといわれています。

そして、冬を越し、春になると再び田の神様を迎えるため、春祭りがおこなわれます。

七十二候 ・ 第四十六候 「 雷乃収声 ( かみなりすなわちこえをおさむ ) 」

秋分の初候に変わり、春から夏にかけて鳴り響いた雷が収まる頃となりました。

面白いことに、今回の候「雷乃収声」は、春分の末候

「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」と対になっています。

 

春分に鳴り始め、秋分に収まる雷、それは稲が育っていく時期と重なります。

そのため、昔の人は雷の光が稲を実らせると考えたそうです。

実際に雷は、気中の酸素や窒素に化学変化を起こさせ、天然の肥料の窒素酸化物を作り、

雨とともに大地に降り注ぎます。

この窒素酸化物は、窒素系の肥料と同じもので、稲や植物の成長を助けます。

椎茸などのキノコ類も、雷に反応して成長するのだそうです。

 

雷の放電によって起こる稲光を「稲妻」ともいいますが、

昔は「稲夫」と書いて「いなつま」と読んでいました。

この、雷光によって稲が実るという信仰から、雷を稲の夫、

すなわち「いなづま」と呼ぶようになったそうです。

「つま」は配偶者の意で、古くは夫婦や恋人が互いに相手を呼ぶ言葉で、

男女関係なく「妻」「夫」ともに「つま」といいました。

現代では「つま」という語に「妻」が用いられるため、「稲妻」になったと考えられています。

ちなみに雷は夏の季語ですが、稲妻としたときは秋の季語となります。

 

8月末になると田んぼは黄金色に変わり始め、実りのときを迎えます。

稲穂がたわわに実る陰暦8月の別名は「穂張り月」。

夏の空を騒がせていた大気も安定し、いよいよ本格的な秋がやってきます。

空の様子も夏とは異なり、入道雲の代わりにも秋の兆しである鱗雲が現れます。

雷が去れば本格的な秋の訪れです。

二十四節気 「 秋分 ( しゅうぶん ) 」

明日23日は秋分であり、彼岸の中日です。

秋分は、太陽が真東から昇り真西に沈む日で、昼夜の長さがほぼ同じになります。

太陽が極楽浄土があるという真西に沈み、先祖と通じ合える日とされていることから、

秋分の日を中心とした一週間は、お墓参りをする習慣があります。

「祖先を敬い、亡くなった人をしのぶ日」として国民の祝日にもなっていますね。

 

また秋分は、国民の祝日であるとともに、二十四節気のひとつでもあります。

秋分の日を境に日が短くなり、秋の夜長に向かいます。

日中の暑さも和らぎ始め、野には薄の穂が顔を出し、太陽が離れていくため空が高くなるなど、

本格的な秋の訪れを感じられる頃です。

空には秋雲がたなびくようになり、これから次第に秋が深まっていきます。

 

近頃とんぼを見かけることが多くなりました。

とんぼといえば「夕焼け小焼けの赤とんぼ」の歌い出しで知られる『赤とんぼ』を

思い出す方も多いのではないでしょうか。

なじみ深い生き物ですが、実際に「赤とんぼ」という名前のとんぼはおらず、

「ナツアカネ」や「アキアカネ」、「ノシメトンボ」といった体の色が赤っぽいとんぼの総称だそうです。

赤とんぼ

こちらは「アキアカネ(秋茜)」。

舞い飛ぶ姿や体の色で季節の変化を教えてくれるとんぼです。

春先に卵からかえり、やごとなり、6月頃には羽化してとんぼの形となり、

大空へと羽ばたいていくアキアカネ。

その後、暑い夏の間は涼しく暮らすために山の方へ移動し、秋になると平地に姿を現します。

羽化をしたころは、黄色味の強い橙色ですが、秋の深まりとともに

正真正銘の赤とんぼへと変わっていきます。

そして体が鮮やかな赤色に染まったら恋の季節の到来です。

とんぼ

ブルーの光沢がきれいなイトトンボも発見しました。

秋の彼岸入り

今日は彼岸入りです。

「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、長く続いた残暑も、

秋分の日の頃には落ち着き、秋の気配も深まってきます。

 

お彼岸には、「春の彼岸」と「秋の彼岸」がありますが、

その期間は、春分・秋分の日を中日として前後3日間を合わせた7日間です。

また、初日と最後の日をそれぞれ「彼岸入り」「彼岸明け」といいます。

2014年の秋の彼岸は、9月20日が彼岸入り、23日が中日、26日が彼岸明けとなります。

 

秋の彼岸は、墓参りや先祖供養が行われますが、旧盆に近いことや、

農繁期と重なることもあり、春よりも控えめにするところが多いようです。

これらの墓参りの行事は、6世紀前後が始まりとの説があり、日本独自の民俗行事。

お寺では、法要や僧侶の法話、施餓鬼なども行われます。

 

ところで「彼岸」とはいったい何なのでしょうか。

彼岸は、あの有名な三途の川の向こう岸のことで、悟りや涅槃の世界のこととされています。

それに対してこちら側の岸のこと、現世を「此岸(しがん)」と言います。

極楽浄土は、西方、十万億土を隔てた所にあるといわれ、

春分・秋分の日を中心にその前後7日間ほどは、太陽が真西に沈み、

仏の世界と現世が最も近い日で、通じ合える日とされているそうです。

その為、この日に先祖供養をすると、魂が迷わず極楽浄土に行けると考えられました。

 

今日は彼岸入りであるとともに、「空の日」でもあります。

馴染みのない記念日ですが、明治44年のこの日、

山田式飛行船が東京の空を一周したのを記念して制定されました。

夕焼け

先日きれいな夕焼け空が見えました。

こんなにも鮮やかな茜色の空だったのに、あっという間に沈んでしまう夕日。

「秋の日はつるべ落とし」とはうまく言ったものです。

七十二候 ・ 第四十五候 「 玄鳥去 ( つばめさる ) 」

白露が末候へと変わり、春先に飛来してきたツバメが去り始める頃となりました。

子育てを終え、季節の移り変わりとともに暖かい南の地域へと旅立っていきます。

越冬先である東南アジアやオーストラリアまでは数千キロ。

1日300キロ以上飛ぶこともあるそうです。

 

ツバメは昔から季節の移ろいを知らせてくれる鳥として人々に親しまれてきました。

夏に子育てしていたツバメを見なくなったら、秋が深くなってきた証拠です。

清明の初候は「 玄鳥至 ( つばめきたる ) 」。

暖かくなった春先にはまたツバメが日本へと戻ってくるので、それまでしばしのお別れです。

 

先週末に蓼科山に行ってきました。

その山荘付近で、ふっくらとした体つきが可愛いウソを発見しました。

ウソオス

ウソのオスは、頭と尾、翼の大部分が黒色で、喉が紅色なのが特徴です。

ウソメス

こちらはウソのメス。オスと違って紅色の部分がありません。

オスは照鷽(てりうそ)、メスは雨鷽(あめうそ)とも呼ばれます。

ヒ、フーなどと口笛のような声で鳴くウソは、

「嘯く(うそぶく)=口笛を吹く」というところから名づけられたそうです。

その細く、悲しげな調子を帯びた鳴き声は古くから愛され、

江戸時代には「弾琴鳥」や「うそひめ」と呼ばれることもありました。

 

ヤマネ

残念ながらウソの鳴き声を聞くことはできませんでしたが、

山頂の帰り道、とても小さく可愛らしいヤマネ(?)に出会うことができました。

 

七十二候 ・ 第四十四候 「 鶺鴒鳴 ( せきれいなく ) 」

白露の次候に変わり、鶺鴒が鳴き始める頃になりました。

「チチッチチッ」と鈴のように高い声を放ちながら、秋の空をさわやかに飛んでいく鶺鴒。

鶺鴒は水辺を好むため、そう馴染みのある鳥ではありませんが、

民家の軒下などにも巣を作るので、その鳴き声だけでも聞いたことがある人は多いはず。

 

鶺鴒は、長い尾が特徴のスマートな小鳥で、羽色は主に背黒、白、黄の3種類が見られ、

それぞれセグロセキレイ・ハクセキレイ・キセキレイなどと呼ばれています。

尾を上下に振り、地面を叩くように歩く様子から「石叩き」という異名がつけられました。

また、イザナギとイザナミに男女の交わりを教えたことから「恋教え鳥」とも。

こうした伝説から、鶺鴒は古来より結婚の儀に関係が深く、

皇室での成婚時に新床の飾りには鶺鴒が置かれてきたそうです。

 

白露

今朝、庭の草木を見てみると、白露(しらつゆ)が宿っていました。

先人が名づけた二十四節気の「白露」、まさにこの季節にぴったりな言葉だと思います。

露1

葉先に連なる美しい白露も見つけました。

「露が降りると晴れ」という言葉通り、

今日はさわやかな秋風が吹き抜ける気持ちのいい一日でした。

七十二候 ・ 第四十三候 「 草露白 ( くさのつゆしろし ) 」

白露の初候に変わり、野の草に降りた朝露が白く光って見える頃となりました。

露は夏から秋への季節の変わり目など、朝晩の気温が下がる日によく見られ、

秋の季語ともなっています。

 

「露が降りると晴れ」という天気の諺をご存知でしょうか。

露は、空気中の水蒸気が冷やされてできるもので、風と雲がない晴れた夜に、

地上の熱が上空に逃げる「放射冷却」という現象によって発生します。

昼間に太陽熱によって蓄えられた地上の熱は、夜になると太陽光が届かなくなり、

空に向かってどんどん逃げて行きます。

 

夜間雲がある場合は、地上から逃げ出す熱をある程度雲が防いでくれますが、

雲がない夜は、熱はそのまま宇宙へと放射され、地表温度は下がっていきます。

そして、1日のうちで最も気温が下がる明け方になると大気が冷え込み、露を結ぶというわけです。

もちろん、夜の間中雲一つなかった空は高気圧に覆われ、安定した気圧配置に

なっていることが多いので、昼になってもその天気は変わらず晴れのままです。

このため、朝に露が降りるとその日は晴れる、夜のうちに露が降りていると

翌日は晴れる可能性が高い、と言われています。

 

朝夕の涼しさがくっきりと際立ってくるようになりましたね。

この時期になると秋もだんだんと深まりを見せ始めます。

気付けば庭のシソに白くて小さな花がたくさんついていました。

紫蘇の花

そして、小豆のさやもだいぶ色が変わってきました。

収穫が待ち遠しいです。

小豆0910

五節句 「 重陽の節句 」

9月9日の今日は重陽(ちょうよう)の節句です。

重陽は、五節句の一つで、旧暦では菊が咲く季節であることから「菊の節句」とも呼ばれます。

中国では古くから奇数を「陽数」として神聖視しており、奇数の中でも最も大きい数である

“9”が2つ重なるこの日を「重陽」と呼んで特にめでたい日とされてきました。

 

中国では、菊の花は仙界に咲く聖なる花とされ、その菊のエキスが谷川に染み入り、

里の下流に住む者たちは長寿を保ったという故事があります。

そのことから、菊の花弁を浮かべた酒を飲んで不老長寿を願う風習が生まれました。

重陽の節句には、長寿と無病息災を願って菊の花を飾ったり、菊酒を酌み交わします。

 

また平安時代には、重陽の節句の前日に、美しく咲いた菊が夜露に濡れないように、

赤、白、黄の花の色に合わせて染めた真綿で花を覆って、菊を夜露から守った

「菊の被せ綿(きせわた)」という風習がありました。

節会の当日、花から外された色とりどりの真綿には、ほんのり花の香りが移っていて、

この綿で、顔や手足をぬぐえば、永遠の若さが保てる、長生きすると信じられていました。

 

重陽の節句は江戸時代、武家社会の中で最も重要な行事の一つでしたが、

明治以降新暦に変わると、季節感が大幅にずれてしまったため、

今ではあまり行われなりました。

現在は、菊の開花に合わせた10月から11月にかけ、各地の神社などで

「菊まつり」が行われています。

「 中秋の名月 ( 十五夜 ) 」

今日は中秋の名月です。

中秋の名月は、十五夜とも呼ばれ、旧暦8月15日に見える月を意味します。

 

秋は、最も空が澄みわたり月が明るく美しいとされていたため、

平安時代から十五夜には観月の宴が開催されてきました。

当時は貴族だけの習慣で、庭に池を掘り、月影を映して楽しんだそうです。

江戸時代には、その宴と秋の収穫を感謝する祭事が合わさって一般に広まり、

今の「お月見」が形成されていきました。

 

ところで「中秋の名月」は「仲秋の名月」とも書かれますが、その違いをご存知でしょうか。

春夏秋冬はそれぞれ3ヶ月ずつとなりますが、この3ヶ月を順に「初・仲・晩」と呼びならします。

例えば旧暦での春1月・2月・3月は初春・仲春・晩春となり、

同様に、秋7月・8月・9月は初秋・仲秋・晩秋となります。

なので、一般に「仲秋」は旧暦8月全体を指し、「中秋」は仲秋の更なる中心の日として、

旧暦8月15日のみを指します。

「仲秋の名月」は、十五夜の月に限定されないことになり、名月といえば満月なので、

話の意味合いからは、「中秋の名月」のほうが秋のお月見には近い感じがします。

 

明治以降、古くから旧暦で行われていた、端午の節句や七夕などの行事の多くが、

新暦へと移行していきました。

ですが、中秋の名月は月の満ち欠けをベースにしているため今も変わらず旧暦です。

そのため毎年日付が変わり、9月中旬~10月上旬の間に中秋の名月がやってきます。

ちなみに2014年は9月8日でしたが、2015年は9月27日、2016年は9月15日となります。